島を出よ2

2月 4th, 2011

管轄外を決め込むミッチャンは当然見もしない。途中から作業に加わっていた組合長も、やはり権造を見ようとしない。組合長は、他の人の時のように手伝いもしなければ、特に不機嫌でもないし、拒否もしない。ただ、ミッチャンも組合長も貧乏ったらしいのが嫌いなのだ。
組合長はイヌ・ネコ・貧乏が嫌いで、好きなのは孫と仕事だ。ミッチャンは嫁・宗教・貧乏が嫌いで、好きなのは橋田壽賀子のドラマと細木数子だ。
つまり、権造は貧乏ったらしいのだ、普通の目には。
権造は最初からケンジの方に視線を向ける。ケンジはこの手のタイプにはそう不機嫌ではない。しかし、だからと言って愛想を振りまくわけでもない。

無言のまま、そこから持ってけと顎で合図をすると、権造はそそくさとビニル袋に血合いを入れ、黙って出ていった。
ケンジは、女物のヒールでサビサビのママチャリにまたがる、いかり肩の権造を見ながら、ハサップ法の事も今朝書いた下らないブログの事も忘れて気分が良くなっていた。
元助役は自宅でかっているネコのエサか、釣りだろう。権造は食用。人の生き死にの問題なのだ。
ケンジの客筋は他に、権造にはかなわないけれど、いかしたファッションの「きぃバケ」や「ナイロンあに」などがいて、彼らはネコのエサ、と宣言して血合いをもっていく。実は食用じゃね?ってケンジは思っているし、野良猫にバンバンやってるかも、とも思っている。山分けかも知れない。きぃバケは、ひょろーっとしていて、ポキッと折れてしまいそうで、意味もなくすぐに転びそうに見える。きぃバケが言うとおりにネコのエサだとすれば、エサをやってるうちに、きぃバケは群がる野良猫に血合いと一緒に食われちまうだろう。だからやっぱり食用だと思う。「これもったいないねー、何かに使えるんじゃない」とか、「ここが一番栄養があるんですよ」とか、上から目線でご託宣をたれるのが老害じじぃとかざーますババアなどの組合長の客筋で、その対比で気分が良いだけとは分かっていても、ケンジは気分が良い。権造は無言。だから仕事中のケンジの最大にやさしい対応を受けることが出来るのだ。ただ、無言でも、食品衛生原理主義者であるケンジの逆鱗に触れる来訪者もいるが、ここでは触れずにおこう。
組合長のお孫さんは学校から、アマミノクロウサギを守るため、イヌやネコの飼育は責任を持ってやりましょう。というパンフレットを持ってきて、ケンジにも見せる。実はお父さんやおじいちゃんが悪の元凶かも知れないと、うすうす感じ始めているのかも知れない。ケンジはうんそうだねーと真っ直ぐに娘の目をみて微笑む。アルミ缶問題と同じだ、明日は我が身そのうち分かる小娘、と微笑んでいるのだ。くれぐれも言っておくが、ケンジに反論してはいけない。ピンと来ない人のため、ケンジ風に言えば、ヤクザも政治家も愚民が相手、彼はインテリヤクザとインケン官僚を相手にしてきている。ねじれた論客だからだ。

そう言えば、きぃバケは最近来ないなぁ。

あんなこともこんなこともブログで書いてやろうと思いながら権造を見送るケンジはふと思った。

飲酒運転で捕まったのだろうか。それとも寒さで死んだか。おんぼろ軽トラを捌き室の遠くにとめるきぃバケはいつも酒臭く、午後からやって来ることはない。1週間来ていないきぃバケが気になった。もしや、人食いネコ事件か。

 

もうちょっとだけ、つづく

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