楽天漁船

3月 11th, 2011

※当ブログには、差別的表現ないしは差別的表現ととられかねない箇所がありますが、それは宝勢丸が抱えた社会的・文化的慣習の差別性が反映された表現であり、宝勢丸を描く表現としてある程度許容せざるをえないものと考えます。著者には差別を助長する意図はありませんし、また著者は弱小零細の故人、商人、小人であります故に、環境問題についても疎いようです。読者諸賢が注意深い態度でお読み下さるよう、お願いする次第です。

魚が少なく作業者も少ないので、ミッチャンが調理室の片側半分の蛍光灯を消し、黙々と刺身のパックを仕上げていく。そのうしろを、アホか作業効率が落ちるわ、所詮おんな子どもの浅知恵、と思いながらケンジが黙って通り過ぎる。経費節減、か。外へ出たケンジは、眉根に皺を寄せながらマイセンに火を点けた。長く白い煙を吐きながら、その嫌悪感はすぐに消え、すぐに別のものが頭にうかんだ。だいたい、何で、10ですかって確認されなきゃいけないんだ。マイセンはマイセンだ。ライトでもスーパーライトでもねーっちゅうの。JTのアホが。
そんなことを考えながら、事務所に入ったケンジは、着信メールを確認しはじめた。”また意見をお聞かせ下さい”などと結んであるものを見つけ、うまくくすぐるよなーと口調は冷めながら、喜色満面の笑みを浮かべている。地方国立特有の田舎優等生根性のケンジは、こういう言葉にコロッといかれてしまう。
「すいませーん」事務所に来客のようだ、組合長が在室であるため、同じメールをニタニタしながら読み返しているケンジ。「KTSのものですけど、ちょっと取材を・・・」聞こえてくる来客の声にピクと反応した。焦点がモニターから外れ、宙に漂っている。
ケイティーエス、kts、、何だっけ、どっかで聞いた名称だ。メディアだメディア、きっとそうだ。隣の部屋に感度最大で聞き耳を立てながら、ケンジはすぐにググった。
トップに出てきた、おー、テレビ局じゃねーか。お、新萌岳ライブビューだ・・・。
隣の部屋からは、燃料の高騰のことで取材している、というような話し声が聞こえる。
プププ、今の組合長の頭の中は燃料より水揚げ高だ。脳内メーカーを見せてやりたい。燃料の燃は1%も占めていないだろう。何とも間の悪い記者だ。
案の定、メディア好みの返答をしていないようで、ちぐはぐなやり取りを繰り返し、長ばなしの様相を呈してきた。
微糖コーヒーを飲みたくなったケンジは、外へ出るためにその部屋を通過するも、無関心を装いチラとも記者をみない。どういう論調でまとめるつもりかな、オレに聞いたら、いろいろ言ってあげるけどなぁ、でも弱者の態をとらないとボツだろな。頭の中はそんな事を考えている。別段強者でもないくせに、地方国立特有のとことんのひがみ根性である。外へ出ると、カメラマンは外で待っているようだった。なるほど、使えそうなら外で撮影なんだ、とマスメディアの段取りつかんだぜ風の面をしながら、自販機に近寄ると、微糖よりもちょっと甘いコーヒーにしたくなったケンジは、”厳選した牛乳で甘さひかえめに仕上げた、シンプルで上質なコーヒーです”と書かれた白い缶を選んだ。戻るついでで組合長の机の前に立っている記者を観察するケンジ。視界の端にふいに人影が入れば自然にそちらを向く記者の視線とぶつかった。おっと、無関心、無関心。ケンジはそそくさと隣の部屋へ消える。
ほどなくして記者は帰り、組合長が名刺をもって隣の部屋に入ってきた。燃料が上がってどうですかって取材・・・言い切らないうちに、達人が、「7円、8円の燃料代なんかカンケーねぇよ。魚がつれてなんぼじゃ、くだらねぇ」と吐き捨てた。どうにかして漁家から使えそうなコメントを引っ張り出そうとしている記者と組合長のかみ合わない会話を長々と聞かされて、経理処理をしながらイライラしていたのであろう。
ケンジは、組合長がもってきた名刺に目を落としながら、そうだ、そーだ!と地方国立特有のひがみ根性な声で同調した。イメキャラらしい、ゆるキャラとか言いそうな、とさかの無いグーグーガンモのようなイラストの下に、※映像などの取材情報は各種媒体で使用することがありますのでご了承下さい。と書いてあるのを読みながら、マスゴミのアホめ、漁師に聞くなボケー、と地方国立特有の品のなさで続けた。
威勢はいいが、70円上がったら泣きが入るし、あと一月もこの状態が続けば非常事態宣言なのだ。
漁獲一番、魚価は二番、三時のおやつは消灯だー。性懲りもなく下らない替え歌を考えているようだ。♪をつけてケンジがニタニタしている。

腹張って目弛み、面厚くして、恥薄し。いよいよ末期症状のようで、暴走は止められない。

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