1Q87(フィンランドの森)

12月 16th, 2011

古田は潮日中で一番の秀才で、常に学年トップの成績をおさめ、県内屈指の進学校、亀丸高校に離島枠でパスした。中学卒業後は一度も連絡をとったことはなかったけれど、私が大学生になって間もないころ、誰から聞いたのか古田が私のアパートを訪ねてきた。

国立の医学部を目指しているという古田はその頃も浪人生活を送っていて、親が学校の先生をしていたので、その時は鹿児島市内にいたのだと思う。それで福岡から鹿児島に来ていたようだった。お盆の頃のことだっただろうか。。。こうして振り返ってみれば、その後数回は手紙のやりとりがあったことも思い出される。人間万事塞翁が馬、と封筒のうしろの、住所のそばに書かれた彼の字を覚えている。

久しぶりに会った彼の風貌は、私に何でも話させた。
大阪にいるあいだのいろんな出来事、二次募集で合格だったので4月になってバタバタと越してきたこと、新生活の準備がすべて整って目が覚めた朝の感覚、初恋の彼女に大学で再会したこと、福岡の大学に通う女の子からもらった手紙のこと、京大に行く時タクシーに一緒に乗った子に物理学実習で会ったこと、遠距離恋愛の手紙のやりとりのこと等々、話したように思う。思うけれど、それが話した事か、書いた事か、そこまでは言わず考えただけのことか、今となっては区別がつかない。
福岡へもどる前にもう一度だけ、古田は私のところに顔をだした。その時は女の子連れで、その子は私のアパートで3人分の昼食を作ってくれた。彼女も浪人中で亀丸高校の一つ後輩といっていた。
その日、古田の彼女は本棚から本を数冊借りて帰った。
10日ほどして1人で返しに来て、
感想を言いながら本を物色し、また数冊借りて帰った。
このときは返しに来るのが遅かったように思う。
そして本を借りて帰ることはなかった。

古田の手紙に、『ノルウェイの森』いいよ。と書いてあったので、ふーん、気が向いたら読んでみるよ、と返事に書いた。
あの子は彼女でもなんでもないよ、実家で宅浪中とも書いてあった。

で、20年以上経って、なんとなく気が向いたので読んでみた。
(読みながら上のようなことを思い出す。男子校卒業的な体育会系な私をすこし、いや、かなり残念に思う)
寝転んで読んでいる私の横を通りながら、タイトルをのぞき込む村上春樹ファンの明子姉さんはうれしそうで、
「自分さー、日本人のしか読まないでしょ。外国の作家もいいんだよ。」と言って、何冊かおすすめの洋物を持ってきた。
「わかった、わかった、気が向いたら読むよ。」

「俺の誕生日、十、二十と覚えると覚えやすい」と言っていたから、新田もまだ20だったと思う。『ノルウェイの森』のどこがイイと思ったんだろ。20の新田に訊いてみたい。
ごくフツーの事を淡々と書いているだけとも思うし、みょうな空間を絶妙に描いているとも思える。
けど、
私の緑さん(?)の普段をみていると、村上春樹の小説を好んで読んでいる人とは思えなかったりするのが可笑しい。

けど、

可笑しがってる私のほうがおかしい。主人公にはまり込むあたり、やばい、むすめと同じだ。

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