海と森と私と

8月 2nd, 2013

拾い読みなので、改めて読み直すつもりですけれど、、

7月のいち押しはコレ。

タイトルに”震災”とありますが、漁業の在り方を問う内容で、タイトルからのイメージより広い視野へ話は展開されます。思想・哲学のはっきりした主張であるため、たいへん歯切れもよい。そしてそんな本の著者が私と同じ69年生まれというのもうれしい。

第7章と第8章と、、いや、終章だけでも、、漁協役職員だけでも、、読んでほしい一冊。

抜き出して紹介したい箇所も多いですが、一つだけ。

・・・

東日本大震災からの復興を提言する内容には、今後はしっかりと資源管理を行うべきだという文言が目につく。まるで震災前はなにもしていなかったと受け取られてもおかしくない。そしてどうやら「資源管理」という言葉の裏にあるのは、北欧で行われている事例のようである。・・・アイスランドやニュージーランドなどでは、研究機関が資源量の再生産モデルを考慮し、はじき出した生物学的漁獲許容量・を参考にして、魚種別漁獲許容量・を決め、それを個別企業に分割する割り当て・、さらにそれを売買できる譲渡性個別割当て・制度が採用されている。漁獲量の枠を証券化できることから、市場万能主義に通じる制度であり、1980年代にサッチャー政権が誕生し、新自由主義路線を突き進んだ英国の影響を受けて導入された。この制度では、漁獲量の枠を守らなくてはならないが、漁獲枠の所有権は漁業とは関係のない都市部の人でもよい。漁獲枠内で漁民に漁獲させて利益を得るという構造だから、漁獲枠の所有者は地元の漁村や漁場がどうなろうともかまわないという意識をもちうる。つまり、権利から得られる利益さえあればよいという発想である。一方の漁業者は、所有者に言われるがままに魚を獲っていればよいという意識になりがちである。この制度のもとでは、漁業者は経営者ではなくサラリーマン、悪く言うと小作人という位置づけになる。漁村の地域経済の内発的発展よりも外来型開発を推進するという考え方が、この制度の背後にはある。つまり、漁村にいないクオータホルダー(漁獲枠の所有者)は、漁場利用者としての主体性をもつ必要はないから、主体的に漁場保全活動を行わなくてよい。他の漁場利用者と交わる必要もない。この体制は、机上の理論を実践に結びつけた事例である。漁民は新自由主義に舵を切った国家の経済体制の犠牲になったのである。こうなると、漁場に愛着のないものが漁場を使い、漁場を使い捨てにできる。しかもクオータが資金借入れの担保物件になるし、譲渡性であるがゆえにクオータは流通するので、海外にさえ流出する。・・・

・・・

こうした環境NGOの活動は、ほ乳類動物の捕獲や混獲、あるいは希少資源の漁獲を非難するものが多かったが、近年は資源管理と環境保全を重ね合わせて、漁業管理体制への非難も強めている。さらには、資源の悪化状況を消費者に問いかけて、持続可能な漁業を行っている漁業者から水産物を買うべきだとも訴えている。そして差別化を図るエコラベル・も広げた。一見、彼らの主張はもっともに思えるが、認識の浅さから生じる問題については、やはり看過できない。・・・

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筆者の知るところでは、資源調査を自ら行うことなくデータを使った卓上の計算結果のみで判断する研究者の意見は現場では受け入れられず、漁業者と一緒になって研究を積み上げてきた研究者(水産試験場の研究員など)の意見は比較的受け入れられる傾向にある。つまり、後者の場合にはじめて相互関係のなかで信頼が醸成され、漁業と科学の共存が実現化するのである。そのことから、持続可能な漁業の実現は科学者の勧告を受け入れるかどうかにかかっているとするNGOの主張は、現実を知らない消費者を巻き込むことはできても、漁民に対してはたんなる圧力的言説にしかならない。彼らは、漁業と科学の関係者が信頼関係のなかで成り立つことを理解せず、漁民を科学にひれ伏せさせるために何を仕掛けるかが関心事であるかのように行動するのである。・・・

 

あ、

一つだけと思いながら、、。

とにかく、科学を否定しているわけではない、ということだけは付け足しておきます。

 

昨日の普及指導員さんとの打ち合わせの終わりに言いたかったのは、御用学者のビジネスや、なんとか産業化事業などなど、類似品と混同されないようにしたいものです。っつーことでした。そうでないと漁業者はそっぽを向くからで、ますます選択と集中からもれてしまいます。

最後に、

終章でちらりと、林業の衰退と関税撤廃、TPPと漁業の衰退の話を一緒に混ぜてしまっているが、これはいかがなものか。TPPは関税撤廃よりも、経済制度の一元化を図っていく方向性が問題というのはイイと思いますが。ここは削除した方が林学卒農学士に違和感を持たせることなく、全体が締まる気がしました(笑)。

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